チャーリーズエンゼルパイ



少なくとも今の朝唐だったら、これを東京に撒き散らそうなどという考えは、恐らく持ち合わせてはいないであろう。


しかし、もしも今回の事が無かったら……


そう考えると、シチローは安易に朝唐の事を黙って見逃す気分にはなれなかった。


「さあ!どうなんですか!」


鋭く詰め寄ったシチローに対して、朝唐の方は無言のまま暫くシチローの方を見つめ返していた。


そして、少しの間をおいて、静かに口を開いた。


「シチロー君と言ったか……“あれ”を見たのかね?」


“あれ”というのは勿論、第7サティアンに貯蔵されている物を指しているのに相違無い。


「かおりさんを捜している途中で、偶然見付けてしまったんです。あれを見るまでは、オイラもまだ半信半疑でしたけどね……」


シチローのその言葉を聞いた朝唐は、右手で自分の顔を鷲掴みする様な仕草で「ふふ…」と小さく微笑った。


「見られてしまったのなら、仕方無い……実は、あれはパイプを伝ってこの礼拝堂にも繋がっていてね……」


朝唐の口から、予想外の言葉が発せられた。



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