ハルオレ☆ -前篇-
俺が焦ってるその時だった。
「答えは、1。」
と、小さな声でそう聞こえた。
それは、俺の前の席である彼方の声だった。
俺は、ハッとして顔をあげた。
彼方は、俺に答えを教えてくれたのにも関わらず、何もなかったように机に向かってノートに書き込んでいた。
そして、圭先生や他のクラスメートが数人、俺のほうを見ている。
俺は、ゴクリと息を呑むと迷わず口を開いた。
「え、えっと。答えは、1です!」
俺の声が教室に響いた。
すると圭先生が教壇から両手をどけて、軽く拍手をした。
「正解〜!はるちゃ〜ん。やればできるじゃない!実はこれ、ちょっとした難問なんだよ。」
え?そうなの?
し、知らなかった。
っていうか俺がどうがんばっても解けるはずないわけだ。
「しかも、特別な証明方法を使わないと解けない。うん、はるちゃん。すっばらしいっ!」
圭先生がそう言ってまた拍手すると、クラスメートががやがやと騒ぎ出した。
「あーあ。難問だから、きっと答えられなくて面白い答えが出ると思ったのになぁ。俺的に少し残念。」
「先生!難問だったら最初から解説して下さいよ!」
問題をまじめに解こうとしていた生徒たちは、遊んでいる圭先生に文句をいい始めた。
そりゃあ、俺だって言いたい。
「あ〜はいはい。わかったよ。じゃあ!今の問題、解説始めるぞ〜」
圭先生は、生徒たちの文句を聞き流して、黒板の前に立ち上がった。
そして、解説が始まると先程までがやついていた教室は静まり、圭先生の声とチョークの音が響き渡る。