ハルオレ☆ -前篇-
「そんなわけで遠山君、よろしくね〜」
そう言うと藤岡先生は、俺から手を離した。
「はい。こちらこそよろしくお願いします。」
俺が軽く頭を下げると、隣からため息が聞こえてきた。
それは、もちろん彼方だった。
「まぁ、今回は何もなかったらよかったけれど。理事長と両立出来ないんだったら、保健医やめること真剣に考えてみたほうがいいと思うよ。」
彼方は相変わらず、藤岡先生に飽きれていて不機嫌そうだった。
「え〜。彼方。そんなこと言わないでくれよ。昔から医者になるのが僕の夢だったんだ!今は理事長やらざるをえないんだから、せめて保健医は僕がやりたいじゃないか。」
「はぁ?さっき人件費がどうこう言ってたけど、結局自分のわがままじゃないか!」
「何を言ってる!人件費の問題は本当だぞっ!」
彼方と藤岡先生は、理事長と保健室事情について討論をし始めた。
そんな光景を見て、俺はさらに確信を得た。
やっぱり彼方と藤岡先生は、知り合いなんだ、と。
あの彼方が自然と素を出してるし…。
まぁ、その相手が理事長っていうのは、かなり問題だけどさ…。
「そういえば、理事長と彼方は知り合いなんですか?」
俺がそう聞くと、彼方と藤岡先生が話を中断して、お互いの顔を見合わせた。
そして、藤岡先生が微妙な表情をして答える。
「知り合いって言うか…。僕的には複雑だけど、簡単に言うと彼方の保護者ってところかなぁ。」
保護者?
明らかに親、じゃないよな?
「なんだよ、保護者って!ただ昔からの知り合いなだけだろ。」
彼方がさらに怒りながらそう言うと、藤岡先生が少しうつむき、やがてニヤリと笑った。