ハルオレ☆ -前篇-
俺にはヤマト兄と彼方のその会話の意味がまったく分からず、ただ二人のやり取りを見ているしかなかった。
「あ、遥。」
「え?」
靴を履き終えたヤマト兄が俺を呼んだ。
「言い忘れたけど、彼方の傍にいるならお前、マスクしとけよ。」
「あ、うん。わかったよ。」
「俺は食堂にいるから、何かあったらすぐに呼びに来いよ。」
「うん。」
「それじゃあ、また後でな。」
俺が『うん。』と頷いてすぐ、ヤマト兄は部屋から出ていった。
ヤマト兄っていつもは俺のことからかってくるけど、本当に優しいな…(*´ω`*)
そういう時、改めてヤマト兄の優しさが心から伝わってくるよ。
俺までなんだかしみじみと微笑んでしまった。
そして部屋の扉が小さくバタンと閉まりきると、俺は彼方の方を向く。
なぜなら先ほどのあの言葉の意味が気になったからだ。
「あ、あのさぁ、彼方。…その、ハチミツ入りって何?」
すると彼方は俺の顔を見上げて、
「…ああ。風邪を引いた時、いつも作ってくれるんだ。野菜スープとリンゴをすったやつ。…それにハチミツを入れると…。」
珍しく俺の質問に答えてくれるなと感心したその瞬間、彼方の言葉が途中で途切れる。