バレンタインシンデレラ
「多分、会う前にメールしてた相手が僕だって知って会いたくなくなったんだと思うんだ」
「なるほど…」

そうです、ごめんなさい。

「外見が嫌だったのかな」
「そんなことは…」

あるけど、そういう意味じゃなくて。

「じゃ、何でだろ」
「…それは、さすがに今までメールしてた相手が冬月くんみたいな人だったらびっくりしちゃうんじゃない?」
「僕みたいなって?」
「う~ん、なんというか、有名人っていうか…」
「有名人?」

冬月くんはおどけたように笑う。
私は言葉をよく選びながら続ける。
自分のことを喋っているかのように聞こえないように。

「冬月くん、すごくかっこよくて頭よくて何でも出来ていい人で、女の子に人気があるじゃん?」
「ああ、よくそう言われるけど…それで?」
「だから、自分なんかじゃ釣り合わないし、会ったらがっかりされると思ったんじゃないかな…その子は」

なんだか本人の前で口に出したら胸が苦しくなってきた。
冬月くんの隣に並んでるのも恥ずかしい。
他の人から見たらすごく異様な光景だろうな。
何であんな子が冬月くんと喋ってるの?って思われてるかも。
やだ…。

< 28 / 78 >

この作品をシェア

pagetop