バレンタインシンデレラ
「そんなわけないじゃん。がっかりするとか、そんな嫌なヤツに見える?」

私は慌てて首を横に振る。

「ううん!そういう意味じゃなくて」

冬月くんは私の慌て様を見て少し笑ってから続けた。

「僕なんかめちゃくちゃ普通だよ。周りからはさっき南さんが言ったようなイメージが固定されてるけどね。おかげでいつも何か期待されてる。先生からもクラスメイトからも、友達からも付き合う子からも、親からも。だから常に努力してなきゃならない。でも僕はそれが嫌なんだ」

へえ、いいことばっかりじゃないんだなあ、冬月くんみたいな人でも。

「けどあのメル友の子と接する時はそういうのがなくて。その子はまっさらな目で僕を見てくれるから。そういう人ってその子しかいないんだ。なんていうか、僕の心の拠り所みたいな。だから失いたくなくて」

心の拠り所…。

「さっき南さんはその子は“自分なんかじゃ釣り合わない”と思ってるって言ったよね」
「うん」
「確かにあの子はそういう風に思ってそうだ」
「本当?」

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