バレンタインシンデレラ
「あ!冬月くんだ!」

クラスの女子がざわざわし始めた。
夏帆ちゃんと私はみんなの視線の先を辿ってみる。

「なんだ、冬月由希か」
「冬月くんて一組の?」
「そ」

冬月くんは教室のドア近くでうちのクラスの学級委員長と何やら話している。

「へ~初めて見た。本当にかっこいいね」

冬月くんは入学当初からかっこいいってすごい噂になってたんだ。

「しかもめちゃくちゃ頭いいんでしょ?」
「そーね」

夏帆ちゃんはてんで興味ないみたい。

「しかも帰国子女なんでしょ?どこだっけ」
「フランス。フランス語ペラペラ」
「すごーい。かっこよくて頭もよくてインターナショナルだなんて、住む世界が違うって感じだね」
「ま、外っかわはそうかもしんないけど、実際は優柔不断で頼りないよ~?超ヘタレ」

夏帆ちゃんは冬月くんと中学が同じで、一緒に生徒会役員もやってたから冬月くんのことをよく知ってるんです。

「周りに流されやすいというか。みんなの意見をうんうんって聞いてるだけなわけ。あたしもう見ててイライラしちゃって。あいつが会長だったけど実際取り仕切ってたのあたしだからね。まあいいヤツだけど」
「ふうん。それでもすごいモテるよね、冬月くんて」
「みんなヘタレなことを知らないからだよ」
「でもいい人だったらヘタレでも別にいいんじゃない?」

夏帆ちゃんは目をまん丸く見開いてみせる。

「へ~いいんだ!加恋はヘタレでも」
「いや、私じゃなくて普通の子は」
「加恋はどうなの?」

私は首を傾げる。

「う~ん、佐藤健くん似ですぅっごく優しければ誰でもいい♪」
「そんなこと聞いてないし」

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