バレンタインシンデレラ
帰りのHR。
いつも通り冬月くんは私の教室の入り口で待っていてくれた。
HRの間、開かれた扉の向こう、廊下の壁に寄りかかっていて、私と目が合うと手のひらを軽く挙げてみせる。
私はそれに答えるようににっこりと微笑む。
このやりとりもいつものこと。

だけど結局この日、私達は一緒に帰れなかった。
一日だけじゃない。
この日から私達は一緒に帰らなくなった。

理由は私にもよくわからない。
冬月くんと話すことすらなくなってしまったから。

でも私はその状態をすんなり受け入れられた。
だって振り返れば私と冬月くんが一緒にいることの方がずっと奇妙だったはずだもん。
普段全く目立たない女の子と学校の人気者っていう、奇跡の組み合わせ。
だから離れて当然。
私は以前の生活に戻っただけの話。
少し泣くことは多くなったけど。
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