バレンタインシンデレラ
朝。
ぽや~っと自分の足元を見ながら正門から昇降口までの道を歩いていると、いきなり誰かに腕を掴まれて私はびっくり仰天した。
振り返るとそこには冬月くんがいて、さらに驚いた。

「ごめん、ちょっと来て」

冬月くんはそう言うと私を人気のない体育館の裏へ引っ張っていった。
久々に話しかけられて、しかもそんなところへ連れて行かれたから私の中になんともいえない緊張が走った。

「ごめん、いきなり」
「ううん」

数日間話さなかっただけなのに、冬月くんがとても遠い存在に感じられた。
今目の前にいるのが変な感じ。

「ずっと佐藤さんにつきまとわれてて、南さんと話したくても話せなくて。だから待ち伏せしてこんなところに連れてきちゃったんだけど」
「いいよ、全然」
「ごめん、それで実はさ」

冬月くんは一息置いて、上を仰ぎ見てから私を見下ろした。

「5日前にlovefoxxxが名乗り出てきたんだ」

lovefoxxxが名乗り出た?

「それがあの佐藤さんで」

一体どういうこと?
冬月くんはそのいきさつを語り始めた。
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