バレンタインシンデレラ
何その…非の打ち所がない言い訳…。

「でも佐藤さんが本当にlovefoxxxだとは思えなくて。メールと実物とでギャップがありすぎるんだよ。あの人すごい自己中でわがままで、最悪なんだ。だから佐藤さんがlovefoxxxなわけないと思ってさ…」
「けど、佐藤さんの言ってること、すごく筋が通ってる」

私は無意識にそんなことを口走っていた。
冬月くんの顔は見ることができなかった。

「え?」
「それに、メールだけじゃわからないことっていっぱいあるし、しょうがないよ。欠点があってもさ。冬月くん、あんなにlovefoxxxのことが好きだって言ってたんだから、そのうち受け入れられるようになる」
「………」

それから私達は2人して黙り込んでしまった。
私は何と言おうか考えながら、ずっと冬月くんを通り越して向こう側、体育館の陰から覗くさっきまで歩いていた道を見据えていた。
いろんな人がまばらに行き交っている。
その中にパッと目を引かれる姿があった。
あの佐藤さん。
しゃんと背を伸ばし、堂々と胸を張り、颯爽と歩いていく。
その姿だけでも自信に満ち溢れているのがわかる。
すごく綺麗。
やっぱり、本物のlovefoxxxなんかよりもずっと素敵。
冬月くんに釣り合うのはお似合いなのは、あの子しかいないよ。

私は笑顔を顔に貼り付けて、冬月くんを見上げて精一杯の明るさで言った。

「冬月くんと佐藤さん、すごくお似合いだし。lovefoxxxが綺麗な子でよかったね!」

それを聞いた冬月くんの表情は、そんなことを言ってほしいわけじゃなかったのに、と訴えかけているように見えた。
でも他になんて言えばいいの?
私にはわからない。

「よくないよ…」

冬月くんは消えかけるような声で静かに言った。
私は、大丈夫だよ、って気持ちをこめてふっと微笑んでみせる。
だけど冬月くんは黙ったまま悲しそうな目で私を見つめるだけだった。
なんとか言ってほしかった。
いつもみたいに笑ってなんか言ってほしい。

そして思いが通じたのか冬月くんはゆっくりと口を開いた。

「…僕は、僕はずっと、南さんがlovefoxxxだと思ってた」
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