バレンタインシンデレラ
そこへ槙くんがやってきた。

「ゆっきー、佐藤さんのおかげで喋るの久々だね。マンガサンキュー。超面白かった」

槙くんは借りていたマンガを冬月くんに差し出す。

「ああ、よかったそれは」

冬月くんはそれを受け取ってカバンに突っ込んだ。

「ところでゆっきーさあ、何で最近佐藤さんにつきまとわれてたわけ?」
「ああ、あの例のメル友が佐藤さんらしい。本人にそう言われた」「はあ?んなわけねーじゃーん!」

槙くんはかなり異常にびっくりした様子で大きな声を上げたので、冬月くんは不審に思った。

「何で?」
「だってさあ!!…ああえと~ええ…」

完璧怪しい!
冬月くんは槙くんを睨みつけ、槙くんはそれを見るとさらにあたふたしだしてさらに怪しまれる。

「何か知ってんな?」
「あの…」
「何を知ってんの?話せ、今」
「………」

槙くんは観念しました、といった風にふらふらと冬月くんの前の席に馬乗りになり、背もたれに両腕を置く。

「キレないでよ?仕方なかったんだから、あれは」
「いいから話して全部。何か隠したり嘘ついたらキレるよ」
「わかりました」

槙くんはしょぼん、としながら語りだした。

「ええと、そのー、二週間くらい前にさあ、佐藤さんにゆっきーから借りてたマンガを取り上げられそうになって…」

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