バレンタインシンデレラ
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朝、私は早めに学校へ行った。
教室にはすでに夏帆ちゃんがいて、私が自分の机にカバンを置くと夏帆ちゃんが隣へやって来た。

「大丈夫?」
「うん。元気だよ」

おととい、昨日は体調不良で休むって夏帆ちゃんにはメールしてあったのです。

「夏帆ちゃん」
「何?」
「大好き」
「は?何いきなり?」
「なんとなく言いたくなったから」
「わけわかんないし!何かいいことでもあったの?」
「ううん、別に」

私はへへっと笑いながら席につき、カバンから教科書を出して机に入れ替え始める。
夏帆ちゃんは隣の席に腰を下ろして、私をまじまじと見つめた。

「もー何ー?あたしがいろいろと忙しくしてた間にさー」
「本当に何もないよ。今日は体の調子がいいだけ」
「ふうん?」

私がにこにこと夏帆ちゃんに笑いかけると、夏帆ちゃんも微笑み返した。
そしてポイフルとアポロを私の机の上に置いた。

「はいこれ、バレンタインデーのお返し!」
「わあ、ありがとう!」

私は早速ポイフルの包みを開けて一粒取り、口に放った。

「おいし~!手出して」

夏帆ちゃんは手のひらを差し出し、私はその上で箱を振った。
夏帆ちゃんの手のひらは箱からこぼれる、つやつやと輝くポイフルを受けた。

「どうもー」

夏帆ちゃんはポイフルを一気食いして、もぐもぐと口を動かす。

「一気…?」
「一粒一粒食べるの面倒くさいじゃん」
「一粒一粒食べた方がおいしいよ」
「みんな同じ味じゃん。変わんないよ」
「色で味違うよ?」
「マジ?知らなかった」

私があはは、と笑うと、夏帆ちゃんもにっと笑った。


そのまま平穏に一日は過ぎていったけど、時間が経つのと比例して私の鼓動は速くなっていった。
そして帰りのHRの最中、私は震える手でケータイのボタンを押していた。

送信。

ケータイの画面に表示された“送信完了しました”を見て、私の口からは熱いため息が漏れた。
ケータイを閉じて、胸に抱きしめる。

うまくいきますように。
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