愛しい人へ
「今日も会いに行くんだ」
「楽しみだな」
「うん。」梨絵は大きく頷いた。
その日、梨絵は誰よりも先に教室を飛び出して
下校していった。
俺はタケと雅人と部活をしてから帰った。
「なぁーどうだったの?」
部活をしてるときから、雅人がしつこい。
まだ勘違いしてる。
「付き合ったの?」ニヤニヤしてる。
「あーのーねー!君、すごい勘違いしてるよ」
俺は雅人の耳に向かって喋った。
きょとんとしてる雅人。
「なに、違ったわけ?」タケがポケットに手をつっこみながら俺を見る。
「ああ。中3の終わりに告白したやつの返事がやっと昨日
返ってきて、OKだったんだってよ。
俺は昨日、返事を聞きに行く梨絵を励ましただけ。」
俺はいっきにそれだけ言った。
ふたりは沈黙している。目をぱちくりさせている。
雅人はどんどん泣きそうな顔をしている。
「拓海ちゃん。すごい辛いな・・。
大丈夫。失恋なんて時間が忘れさせてくれるから」
雅人は俺の胸に手をあてて、やたらに絡み付いてきた。
「あのさー。俺、夏木のこと好きじゃないし!」
という俺の言葉も聞かず、
雅人はすでに違う話をし始めた。
いつもこいつはいい加減な奴だ