愛しい人へ
「拓海・・・・?」
姉ちゃんの声が遠くから聞えた。
目を開くとドアを少しあけて姉ちゃんが顔を出していた。
俺はめぶしさに目を細めた。
外も真っ暗だ。
「ご飯どうするの? もう夜の9時半だけど・・」
「・・・・いらない」
「なんかあったの?」
「別に・・・」
「ひとりにしてほしいの?」
姉ちゃんらしいセリフだった。
「うん」
俺の気持ちを分かってくれた姉ちゃんは
何も言わず そっとドアを閉めて 階段を降りていった。
まだ夜の9時か・・・。
目覚めても現実は変わっていないことに
俺は胸が苦しくなった。