愛しい人へ
「すっげぇー。超幸せじゃん!」
俺はこの時、初めて嘘のない笑顔をすることができた。
不思議だ。
ずっと100%の笑顔で笑えなかったのに、
今は100%の笑顔で笑えている。
「頑張れよ」
俺は強く梨絵の手を握りしめた。
「うん」梨絵は何度もうなずいた。
「誰よりも幸せな女になれよ!」
そういって梨絵の手を放した。
お互いの目に光る涙は、美しい。
哀しみの涙じゃない
俺ももう梨絵を想って泣くことはないだろうと確信した。
帰るとき、遠くに陸が見えた。
俺の見間違いでなければ
陸はしっかりと俺に頭を下げていた。
俺はいつもの道を歩き出した。
もう心に哀しみはなかった。