愛しい人へ
「帰りにここで待ってるからな」
陸は梨絵を睨んでから、離れていった。
「じゃあ行こうぜ。雅人」
「え?ああ。夏木は?」
「行くぞ」
俺は強引に雅人を連れてホームへといった。
「なんで置いていくんだよ?
夏木のこと待ってたのに」
「・・・・・」
俺は遠くを眺めたまま答えなかった。
梨絵が暴力を受けていることは確かだった。
あの様子からすると、
梨絵はやられっぱなしだろう。
だけどアイツは陸が好きだ。
好きなら暴力もいいのかよ。
あいつバカなんじゃねーの。
梨絵を守ってやりたい。
あいつから引き離してやりたい。
だけど、あいつが俺に黙ってたことが
どうしてもムカつく。
拓海はそんな気持ちと格闘していた