愛しい人へ
「家に帰って来てから、
あたしに〈ごめんなさい〉と深く頭をさげて
部屋に行ったきり、出てこないの。」
おばさんの涙が頬を伝う。
「そうなんですか・・・。
じゃあ俺、行って見ます」
「本当にありがとう。」
おばさんは部屋の場所を説明してくれた。
俺はひとりリビングを出た。
そして階段を上がった。
ドアの奥に梨絵がいると思うと、
俺まで泣きたい気分になった。
トントン
返事はない。
「俺・・・拓海だけど」
返事はなかった。
「入るぞ」
俺は部屋のドアをゆっくり開けた。