愛しい人へ
しばらくして梨絵は泣き止んだ。
俺は梨絵をそっと離した。
梨絵は「ありがとう、拓海」と俺の手を握った。
俺は自分の心に熱いものが流れ込んでくるのを感じた。
すごく苦しかった。
それは今までずっと、そうならないように我慢していたものだった。
梨絵を女として見ないようにしていた。
好きにならないように、自然とブレーキをかけていた。
だけど、一瞬の油断で俺の気持ちは押しつぶされそうになった。