愛しい人へ
しばらくして、
「夏木の歌声やべーよなぁー」
「彼女があんなだったらなぁ~」
と、それぞれ浮かれながら
男子が戻ってきた。
俺は頬杖をついてボーとしていた。
「拓海っ」タケが俺の横に座った。
「告白したら?」
タケの言葉がツーンと俺の胸を刺した。
「簡単に言うなよ」俺は冷たく言った。
「じゃあ聞くけど、
なんで最初から諦めてんの?」
「それは・・・・・。」
「それは?」
「梨絵といると、なんかわかる。
まだ吹っ切れてないんだなって。」
梨絵はたまに目を腫れしてくる。
たぶん、ひとりで苦しんでるんだと思う。