ディア フレンド
修行先で・・・
はぁ・・・アタシは今、咲き始めた桜を流れるように見ている。
もう中学三年生か・・・・なのに、転校とか・・・憂鬱だ。
新幹線はアタシの気持ちを無視するかのように猛スピードで走る。
何故こんなことになったのかと言うと時間は昨日にさかのぼる。



「はぁ!? 今頃転校? 婆っちゃ、何考えてんの!?」

「お前は中三なのに料理も裁縫も出来ん。それは女としてどうかと思うが?
だから、お前をワシの親戚の家に修行に出すことにした。」

信じられない・・・転校と聞いても納得出来ないのに、花嫁修業に出すの!?
確かにアタシは裁縫も料理もあんまりしない。
ずっと剣道漬けの生活をしていたけど・・・急過ぎない!?
「絶対アタシは行かない!!友達と離れるなんて・・ヤダよ!!絶対認めないからねっ!!」
 
「これは頼みではない。隣城家頭首としての命令だ。嫌なら・・・この家を出て行け。」

婆っちゃは低く言い放った。アタシの家は代々続く名家だ。
だから、頭首命令を逆らうと言うことは破門と同じこと。しかも、隣城家はここ一体を治めている。だから、隣城家に逆らうと村八分のようなことにもなりかねないのだ。

「・・・っ。分かった・・」

「すぐに支度せぃ。 後30分で電車が行っちまう。」

婆っちゃは何処か寂しそうな表情で座敷を出て行った。
アタシは渋々自分の部屋に行き、キャリーバッグに自分の物を全て詰める。
その前に茉那にメール打たなきゃ・・・・
アタシは小学校の頃、島根から東京に転校して来た。
東京で右も左も分からないときにそっと手を差し伸べてくれたのが茉那だった。
それから茉那とは親友になった。
アタシは茉那との想い出を思い返しながらメールを送信する。
それと同時に荷造りも終える。アタシは玄関に出る。
この家とも当分お別れか・・・
何だか、嬉しいような寂しいような気分。

「杏南、これ。お世話になる家のメモだ。学校の手続きはしてある。それから―。」

「婆っちゃ。大丈夫。行ってくるから、心配しないで。頭首様がそんな顔じゃぁ
気持ち悪い・・・」
 
アタシはそう言い残して出て行く。婆っちゃの視線が背中に痛いほど感じるが気にせず駅に向かう。
家から駅は徒歩5分ぐらいだ。だから、直ぐ着いてしまった。













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