ディア フレンド

聖はアタシのお兄ちゃん。
隣城聖は陸上界で知らない人はいないくらい有名らしい。
紗羅にも聞いたけど知ってた。
どんだけ凄いんだ・・・アタシも自分の名前轟（とどろ）かせたいな。

ハヤテ様は大広間に向かう。
アタシも着いて行く。大広間に入っても
有李栖はいなかった。寝てるのかな・・？


「ハヤテ様、有李栖は？・・」


「有李栖は、まだ起きれないみたいだね・・
きっとなんかあったんだよ。」


「そう・・・ですか。」


有李栖がいないとなんか落ち着かない。
アタシが１３５センチ跳んだって聞かせたかったのに・・
アタシは有李栖の部屋に行って見る。
なんか自殺未遂とかしようとしてないよね・・・


アタシはエナメルを持ったまま、有李栖の部屋の前に立つ。
ふと、耳を澄ますと話し声が聞こえる。
誰かいるのかな？　


「わたし・・・なの？・・
ギースト。・・して？・・・・１回・・・」


何を話しているの？　なんか有李栖、凄く涙声・・
そんなに思い悩んでいたの？　アタシは自分の無力さを怨む。
ぐっと唇を噛み締める。


「杏南・・いるの？　入っていいよ・・」


気付かれていたみたい・・なんか立ち聞きしてたみたいでヤダな。
ガチャっ。

「ゴメンね・・立ち聞きするつもりはなかったんだけど・・」


「いいの。」

部屋の中にはギーストが有李栖の横に腰掛けているだけ。
有李栖はギーストの肩に寄り掛かっていた。
目は真っ赤に充血していて、ぐったりしている。


「お嬢様、私まだいたほうがいいですか？」


「うん・・・傍にいて。」


ギーストは優しく有李栖の頭を撫でる。
まるで恋人同士のよう。アタシこの空間にいていいのか・・


「杏南・・修行。もう少ししたらする。
今日はかなり長期戦。だから・・」


魂が抜けたように話す有李栖。ほんとに大丈夫なの？