ディア フレンド
「青嵐のジュシフ、ここに。」


ジュシフはアタシの足元にかしずく。
海のように深い青色の腰まである髪。
エメラルドのような瞳。妹たちに比べて圧倒的に端整な顔。
だが、何処かその表情には悲しみが込められているように感じる。


「杏南様、失礼ですが、私と修行することはどういうことか
おわかりでしょうか?」

落ち着いた口調。大人っぽい印象だ。
でも、トゥラムたちがジュシフに一目置いているのか
アタシには理解出来なかった。
確かに雰囲気はちょっと大人っぽいが普通の精霊だ。


「まだ教えてないの。ジュシフ。」


声のするほうに顔を向ける。
先程とは打って変わって凛々しい表情の有李栖だ。
巫女の衣装を着るとこんなにも変わってしまうのか・・
有李栖はアタシの横に立つ。ジュシフは軽く一礼する。


「そうなのですか・・ですが私は手加減は致しません。」


冷たく言い放つ。ジュシフの目は凄く怖い。
召喚したときの表情より目がきつい。
アタシは状況が理解出来ない。手加減って・・?


「有李栖、これから何するの?
ただの修行じゃないの?」


有李栖は顔を俯かせる。そんなに危険なこと?
代わりにジュシフが口を開く。

「これから杏南様には私と戦って貰います。
私との勝負に勝ったら貴方を主と認めます。
負けたら・・・それなりの代償は払って貰います。」


「代償?・・どんなの、なの?」


「代償は・・杏南の1番大切な物。
自分で選択することは出来ない。わたしかジュシフが決める。」



アタシは体中に雷が駆け巡るほどの衝撃が走る。
大切な物? そんな・・・失うの?
苦痛な宣告にアタシは表情を歪める。

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