ディア フレンド
凄まじい爆音が静かな夜の空に響く。
杏南は私が油断した拍子に私の腕の間から
その光景を覗き込む。

「お姉、ちゃん?」

私は恐る恐る振り返る。
すると―。

思わず私は息を呑む。
私の目に映ったのは佳苗の心臓を
狗獣刃で刺す。波留華の姿・・・

佳苗の体からは血が吹き出す。
佳苗は涙を一滴流すとその場に倒れる。
その後、波留華もその場に倒れ込む。


「お母さん!!」

杏南は走り出す。ダメ・・
9歳では見てはいけない!!
私は杏南の後を走る。
杏南は佳苗の亡骸の前で膝をつく。
9歳の杏南には受け入れられない事実。

私も2人の前で何も言えなくなる。
波留華も・・自ら・・


「お姉ちゃんが・・? お母さんを?」


杏南はふらっと倒れる。
私はそれを受け止める。ショックで気を失ってしまった。
目が覚めたらこの子は・・・
私は咄嗟に呪文を紡ぐ。
この出来事がなかったことになるように・・






杏南side(現在)

「ですから波留華様のことを
思い出せなかったのはお嬢様が記憶封じを
していたからです。」

そうだ・・アタシはお姉ちゃんが
お母さんを刺した瞬間を見たんだ。

婆っちゃがお母さんの話をしなかったのは
そういうことだったんだ・・・


涙が溢れる。
お姉ちゃんが・・・お母さんを・・・

アタシは有李栖のを部屋を飛び出す。
外はもう暗い。7時半くらいだろうか・・・
アタシはただやみ雲に走る。

どうしてお姉ちゃんが・・
お母さんを・・・

その事実を受け入れられない。
全てが夢であって欲しかった。


ドスッ!誰かとぶつかる。
アタシは勢い余って後ろに尻餅をついてしまう。
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