ディア フレンド
「まだ言えない・・
運命の糸が見えてしまう。
運命の糸はまだ変わるの。
ここで教えたら・・どうなるか・・」


「意味が分からない。
答えになってない。アタシは無理矢理でも
聞き出すわよ・・」


『アタシ』は冷淡に言う。自分の中に別の自分がいるようだ。

どうしてこんなに真実を求めるの?

伶哉くんに教えて貰ったこと無駄にしたくないのに・・

『アタシ』はゆっくり『お姉ちゃん』に
近付いていく。気が付くと手には狗獣刃を持っている。
まさか・・イヤ! ダメ! 
自分の意思とは裏腹に狗獣刃(こうじゅうじん)を
構える。『お姉ちゃん』は後ずさりする。

内心は怖いのだろう。足が少し震えている。
この空間は果てし無いようだ。
辺りには白い靄がかかっているだけ。
逃げても逃げても意味がない。

ジャキッ。
アタシは右手に持ってた狗獣刃を
『お姉ちゃん』の目の前に向ける。
息を呑む音が聞こえる。相当に恐怖感を抱いている。


「杏南・・真実はまだダメ。
終焉のときまで聞いてはいけないの。
その『杏南』にもちゃんと伝えて・・」


その『杏南』? なに言ってるのか分からない。
杏南はアタシ1人。
この感情も? 違う。これはアタシの気持ちではない。
じゃあ・・誰の感情なの?


アタシは狗獣刃をゆっくり下ろす。
その瞬間、すうっと意識がなくなる。
お姉ちゃんが心配そうに駆け寄って来るのが
薄っすら見える。アタシは・・誰?
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