ディア フレンド
恭也side

「えっ?・・杏南!!」

杏南はバーを越えた瞬間。
力が抜けたようになる。
ドスッ。マットにそのまま落ちる。
だが、ピクリとも動かない。
俺は咄嗟に杏南の元に駆け寄る。


「杏南!おい!しっかりしろ!!」

「杏南先輩!!」


「川井。すぐ岡野呼んで来い!
俺は保健室に運ぶから。」


「は、はい!!」

川井は泣きそうになりながら
グラウンドを走って出る。
傍にいた奴らも凄く動揺している。

「みんなとりあえず練習してろ。
紗羅、お前杏南のこと運ぶの手伝ってくれ。」



「わかった。」


紗羅はマットの近くに来ると
杏南を抱き起こす。
俺は紗羅に手伝って貰いながら
杏南を背中に担ぐ。
紗羅は杏南の荷物類を持っている。


俺たちはグラウンドを出る。
校舎までは意外と遠い。
俺は杏南を落とさないように運ぶ。

「ねぇ・・板野くんて
杏南のこと、好きでしょ?」


「えっ・・なんで?」

「だって普通女の子をおぶって
保健室連れてかないし。
抵抗とかあるんじゃない?普通。」


確かに普通の女子だったら
手を貸すことはあってもおぶることは
ないだろう。
杏南だからなのだろうか・・・


「杏南ってモテるよ?
ライバル多いけど?」


「別に。俺、負けねえから。」

俺はやっぱり杏南が好きだ。
渉も杏南が好きだと思う。でも、
俺も好きだから負けられねえ。

俺は世界一、負けず嫌いなのだから・・・
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