ディア フレンド
「杏南は霊力使い過ぎちまって寝てるよ、」

ディフカは安心したようにホッと息を付く。
杏南に謝りたかったのだろう。妙に心配そうな顔をしてる。
いつものサバサバしてるディフカが嘘のようだ。

「あの・・・渉様、杏南様ってどんな方です?あたしいつも姉さんたちから聞いてるんです。なんか、今までの方たちと違うっていうか・・」

「まぁ、凄く真面目ってか。馬鹿正直ってか・・・友達思いなんだな。それがコイツのいいとこだな・・・」

かくゆえ俺もコイツらみたいに救われた奴の1人だしな。
コイツの言葉には魔法みたいに何か大きな力みたいなのがあるんだな。
『逃げるの? 現実から?綺麗ごとかもしれないけど逃げたらダメ』

ディフカは微笑を浮かべる。
そして、今日の出来事を思い出すように話し始める。

「あたしは・・杏南様に教えられました。頑張ってもって言ってるうちは頑張っていないって。杏南様は・・波留華様に似ている・・」


「波留華・・・杏南の姉さんか、確かに似てるな。よく小さいトキ3人で遊んだことあったもんな―、姉妹だし似ちまうんだろう。」



「はい、オリーク姉さんもラム姉も言ってたから・・嘘だとは思いました。でも―、」

俺も小さいトキだったからあんま、覚えてない。
ディフカはすっと立ち上がる。そして、杏南に近付き、おでこにそっと触れる。
そして、何やら呟く。呪文でも唱えているのだろう。
唱え終わると俺のほうに体をむけ、もう一度微笑する。

「渉様・・・杏南様を信じてみようと思います。だって、あんなに真っ直ぐにあたしを見てくれたのは―、杏南様が初めてでしたから。」

そういうとゆっくりドアに向かい、すっと消えていった。
みんな杏南の不思議な力に救われたんだな・・ったく、コイツは・・・

俺は机に顔を伏せ、すっと眠りに堕ちていった。
アイツのあのときの言葉と表情を思い出しながら・・・

『人間だから逃げたくなる。でもさ、逃げたら・・はどうなるの?今言わないでどうするの? ・・・と・・たままでいいの?』


杏南は決して強い言い方ではないが凛と言い放った。
俺はあの言葉で決心がついたのだ。そのお陰で今、・・・



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