ディア フレンド
近付く心と遠ざかる真実
「んー・・転校して来たときに杏南のことを見ていた人なのです。てっきり知り合いだと思っていたのです。」

伶哉くん?・・ダメだ、顔が全然浮かばない。明日学校に行ったらちゃんと見ないと。
アタシは伶哉くんの顔を必死に思い出しながらロールキャベツを1人1人の器によそって行く。もしかして、意外と影薄い人なのかな・・・(笑
アタシはカートみたいなのに全員分を乗せると零さないように押して行く。
カラカラカラ・・・大広間には既にみんな集まっていた。

「おっ!今日はロールキャベツなんだ。僕、好きなんだよね☆」

ハヤテ様が凄い喜んでいる。なんか、子供みたいに笑う人だったんだ・・
凄く可愛い。アタシまで笑顔になってしまう。
アタシはみんなの前に器を置いていく。みんな、感嘆の声を上げる。

「杏南でも作れたんだなぁ・・すげじゃん♪」

ピキッ。アタシの中の何かが少しひびが入った。
渉の目にはアタシはどんな風に映ってんだよ・・・
確かにこんな料理あんま作んないから驚くのも無理はないんだけど・・
でも!! アタシは女らしくないだけで、男ではない!

「アタシでもって何?・・・」

「杏南のオーラがどす黒くなってるのですよぉ・・・渉、今の内に謝るのです。」


「なんで? ホントのことじゃんか。」


ガラガラガラ・・・アタシの中の何かが音を立てて崩れる。
無意識に印を結ぶポーズを作る。有李栖の顔が蒼ざめていく。
ハヤテ様はそっと立ち上がり、避難する。
アタシは笑顔で怒るという、業を成し遂げているようだ。

「渉く~ん? もう一度言ってみようか?・・アタシでも? 一応女ですから出来るのよぉ?」

「杏南?・・・ホンットに怖いから。マヂ勘弁して・・・」

渉は涙目になる。アタシも止めたいけど、ダメだ。
身体が勝手に動いてしまう。お願い、逃げて!!

「はぁ・・・ギースト。お願い。」

有李栖が呼ぶとオレンジの髪のハヤテ様と同い年くらいの男の人が出てくる。
そして、 段々とアタシに近付く。ダメ、直じゃアタシも手加減出来ない。
我慢が・・あっ。アタシは呪文を唱えてしまう。

「炎よ、静かに揺らめけ。」

アタシの手から青い炎が勢いよく出て来る。皆が・・・
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