ディア フレンド
有李栖side

キイムは妬いてるのかしらね・・・まぁ仕方ないわね。
渉は悲しそうな寂しそうな顔で俯く。
好きなら好きって言えばいいのに・・・そうすれば楽になるのに。
人間がそんなに自分の気持ちを伝えずに隠す意味が分からない。
妬みや嫉妬は隠さなければならない気持ちなのはいい。
でも、人が人を好きなるのは別に悪いことではない。
本能なのだ・・だから、そんなに隠す必要はないのに・・

「渉。どうして想いを伝えないのですか?」


「えっ・・なんのだよ///」

「杏南に・・ですよ。何を躊躇うのですか?」


「アイツが困る。急に俺の気持ちを伝えても・・」

「杏南は、大丈夫なのです。自分なりの答えを見つけますよ・・」


「でも、俺は・・」

「―そう・・わたしは何も言わない。でも、彼女も自分の気持ちを少しずつ理解しようとしてる。それを忘れないで・・」


わたしは渉に告げる。わたしは杏南の気持ち紗羅の気持ち、遥妃の気持ち、
伶哉の気持ち・・全ての人の『気持ち』が分かる。
嫌でも聞こえてくるのだ。わたしは人の気持ちを読み取りたくない。
影で思っていること、嫉妬、妬みまで聞こえてくるのは苦痛だ。

「なぁ・・有李栖。お前は・・」

立ち去ろうとするわたしに渉が話し掛ける。
わたしは反射的に立ち止まる。そして、ゆっくり振り返る。
渉は強い眼差しでわたしを見る。決心でも付いたのかしら・・


「お前は・・人の気持ちが分かるんだろ? 杏南は・・俺のコト・・・嫌いなの?」


「―いえ・・詳しくは言えない。でも―。」

わたしはもう一度前を向く。表情を悟られないように。

「嫌いではない。凄く信頼してるわ・・それはどんな感情なのかは分からないけれど、ね?」

わたしはその場から立ち去る。何故か知らないけれど、涙が零れそうになる。
こんなにわたしは涙脆かったかな・・・
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