ディア フレンド
アタシは急いでコスチュームチェンジする。
と言っても、メイド衣装だけどね(笑

アタシは動きやすいミニのメイド服にする。
段々妖気が近付いて来る気配をさっきから感じているので
1分で着替える。
そして、机の横に置いてある狗獣刃(こうじゅうじん)を
持ち、部屋を出る。トゥラムと有李栖も走って来る。

最初は持つのに苦労していた狗獣刃も難なく片手で
持てるほどに成長した。修行の成果かな?



ガチャっ。ゴー・・・

生暖かい風が頬をかすめる。
これは嫌な妖気・・キツイな・・アタシは気を確かに持つ。
こんなの普通の人が嗅いだら間違いなく倒れる。

「杏南様、これはキツイ妖気です。
かなり強い怨念を持った魂のものです。」

妖怪【スポク】には2種類ある。
1種類は人間の欲望から生まれた者。生霊とも言えるだろう。
もう1種類はアタシたちみたいな強い霊力を持った者が召喚した物。
この妖気は前者であろう。

アタシはトゥラムと有李栖と薔薇園に向かう。
中央に立つと轟音とともに何かが歩いて来る。
人間であろうか・・


「杏南・・あれは、凄い念。一筋縄ではいかない。
心して・・・」

アタシは頷く。その【念】はゆらゆらと歩いて来る。
アタシと同じ年ぐらいの女の子。1つ違うのは身体が青白いこと。
目が充血しており、鋭い眼光でアタシらを睨む。


「お前も地獄にオトシテヤル。」

女の子とは思えないくらいの低い声。
機械音声とも思える。何の念かがはっきりしない。
アタシは狗獣刃を鞘(さや)から抜く。

その瞬間、一瞬でその子はアタシの目の前に来る。
アタシは咄嗟に右足で鳩尾(みぞおち)辺りを蹴る。
その子は呻き声を上げる。少し苦しそうにお腹を押さえる。


「うっ・・殺す・・・お前もアイツらと同じだ!!!!」

再び凄いスピードで走って来る。
この子は生霊。倒す事は出来ない・・どうすればいいの。
アタシは印を結ぶ体勢になる。
 
「水よ、一心に流れ。一途に思えよ。」


咄嗟に水の呪文を紡ぐ。すると、アタシの手から水が帯状に吹き出す。
アタシは両腕を前にかざすと水も流れるように
その子の動きを封じる。水は女の子の身体を締め上げる。
だが、


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