ディア フレンド
「甘いんだよ・・・」


女の子は水の帯を引き千切る。
相当な恨みを根源にしてる。恨みを取り除かないと・・
その瞬間、女の子は後ろから大きな爪でアタシの背中を一気に
切り裂く。油断した・・

思わず膝をつく、背中から腰辺りに温かい物が流れるのを感じる。
かなりの痛みがある。立ち上がるのもキツイ。
トゥラムが駆け寄って来る。

「杏南様・・血が・・」


「へ、いき・・こんなの・・・」

口では強がっているが実際、立ち上がるのも困難だ。
何とか立ち、狗獣刃を支えにする。


「気持ちいいよねぇ? 血を見るのってさ。
実際人を殺す勇気はないけどさ?」

この子はイジメにあって大方人を怨んでいるんだろう。
ここまで歪ませるなんて・・このままじゃ死人が出てしまう・・


ふら付きながらアタシはもう一度、印を結ぶ体勢を作る。
霊力もそろそろキツくなってきたな・・でも、アタシが救わないと。

「まだ戦うの? 頑張るねぇ。
コロシテアゲルヨ・・・」


女の子は一瞬でアタシの前に来ると大きな爪でアタシも心臓目掛けて
振り下ろす。アタシのほうが1テンポ早かった。


「火よ、その怨念をも消し去れ。」


アタシの手からは灼熱の炎が溢れ出る。
女の子は至近距離からなので避けられない。
業火の炎は女の子の身体を覆い尽くす。流石に炎は引き裂くことは不可能。

「熱いよ・・熱い。出して・・どうして?・・
助けてよぉ・・・」


なるほど、あれが本来の姿ね・・
イジメは簡単に解決できる問題ではない。
でも、1人でいい。味方がいれば違うのだ。
それを伝えないと・・アタシは印を解く。

すると、女の子は地面に膝を付いて泣き始める。
余程辛かったのだろう。その子の顔は血色が戻り、人間らしくなった。

アタシはそっと近付く。そして、しゃがむ。
そしてその子に語り掛ける。

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