ゴキーラ
ご機嫌なゴキブリたち
将来のミセスジョンソンは、上半身裸で便器に腰掛けて、個室のドアのそとの、がさがさともぞわぞわともつかない音に耳をそばだてていた。それはまるで、夥しい数のドングリを箱に入れて、一方に傾け、また反対側に傾ける時のドングリが一斉に移動する音のようだった。その中に、不定期に引っかくようなおとや、ぶーんと言う低い羽音のような物が混じる。
彼女のことは、ミセスジョンソンになる予定だった女と紹介した方が良かったかもしれない。彼女は今、自分で自分を抱きしめるように身を縮めながら、寝室でのうのうと眠りこけているジョンソンを憎んでいた。
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