ｺﾞｷｰﾗ

ぶーんと言う低い羽音に続いて、こつんこつんと、彼女をやつらから守っている個室のドアに、何か小さな軽い物がぶつかる音がした。彼女は思わず軽い悲鳴を漏らした。
時計を見ると、まだ要約三時を回った所だった。この悪夢がいつ終わるのかは知らないが、これが始まったのは、確か二時ごろだった。ジョンソンが起きるまで待たなければならないのだけは勘弁してほしい。
家の中を案内した時、一つだけジョンソンが中を見せてくれなかった部屋が有った。
「ここはゴキブリの間だよ。そのうち僕の素晴らしい仲間たちに君を紹介したいけど、今日は辞めておこう。みんなもびっくりするだろうからね。でも、もし運が良かったら、彼らに会えるかもしれないな」
「どう言うこと？」
しかし、彼は意味有りげに唇の両端をつり上げただけだった。そして、二時少し前にトイレに起きた彼女は、トイレの個室の中で、彼の言葉と不適な笑いの意味を理解した。彼女は、ジョンソンの言葉で言うと、運が良かったらしい。