許せるのはKissまで!
「キスだけで惚れさせてやるよ」

「何をバカなことをっ…!」

頭に血が上り過ぎて、上手く言葉が出てこない。

「お前、気持ちイイこと好きだしな。絶対に夢中にさせてみせる」

自信たっぷりに微笑む彼の笑顔を間近に見て、思わずクラッ…とくる。

…やっぱダメだ。

この男は危険過ぎる。

なのに動けないし、抗えない。

それなら…。

「じゃあ…見せてもらいましょうか? アンタの本気とやらを」

受けて立つしかない!

「ああ、良いぜ? そうじゃなくちゃ、おもしろくない」

「言ってなさいよ、自信家。わたしは甘くないわよ?」

「上等」

彼は満足そうに頷いた。

甘い空気なんて流れない。

挑むように、お互いを喰らおうとするがごとく、ピリピリした空気が流れる。

けれどそれも心地良いと思ってしまっているあたり、わたしもおかしくなっているんだろう。

…彼のせいで。

「そんじゃ改めて、オレのことは広喜って呼べよ?」

「ヒロ…キ」

口ごもりながらも名前を呼ぶと、彼…ヒロキは嬉しそうに笑った。

「ああ、カナ。そう呼べよ」

香奈っていきなり名前の方で呼ばれると、心臓に悪いんですけど。

前は委員長とか、前田という苗字で呼ばれていたから、急に変わると心臓に悪い。

でも悪い気はしない。

「お前をオレのモノにする。他のヤツになんか、渡さねーからな」

「ふふっ。頑張りなさいよ?」

わたしはぎゅっとヒロキの首に抱き着いた。

「そんじゃまあ、せっかく観客がいることだし?」

その言葉の意味を悟って、思わず顔をしかめる。

「…変態」

「公然プレイってのも、悪くねーだろ?」

「…選択、間違えたわね」

「嘘付け。本音は嬉しいクセに」

ムッとしたので、思わずわたしの方から彼にキスをした。

三度起こる悲鳴。

しかし構わず彼の唇を貪る。

ヒロキは嬉しそうに笑っていた。

きっと本当に嬉しいんだろう。

わたしと…キスすることが。

そしてわたしも感じてしまっていた。

ヒロキとのキスの、気持ち良さを…。



【END】
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