お姫様の秘密



「ー…っ信じられない!
成弥の変態!ど変態!えろ魔神!」

「最後のなんだよ」

「そのまんまだって!
もう近付かないで!」

「……あ?」

「えろが移る!」

「……………」



成弥と距離を離そうと、手を伸ばして制止する私を見て…

“えろ魔神”こと、成弥は溜め息をついた。



「…こ、来ないでよ!」

「何でだよ」

「ま…魔神が移るから!」



じりじりと近付いて来る成弥。

さっきは勢いで言ったものの、校庭で“えろ”と叫ぶんだのを、私ひどく後悔した。


成弥が一歩前進する度、私は一歩後退する。



「お前なぁ…
自分のしたこと分かってる?」

「…それはこっちのセリフだよ!」



成弥は足を止めた。

私も後退するのを止め、成弥を見る。



「俺が玲奈と話してた時」

「……………」



また“玲奈”って呼ぶ…

今はいない、彼女の名前。



「ほらな、今もじゃねぇか」

「…何が?」

「すごい不安そうな顔してる」

「……………」

「今の俺は陽菜だけだって。
そんな顔させたくないんだけど…?」



…見透かされてた。



「不安なら不安って言え。
陽菜のその顔見てると、俺が不安になる」

「……………」

「分かったか?」

「……うん」



そして、成弥が出した手を握った。


一度離れた二人の距離は、再び近くなった。



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