君の影をみてる〜幼なじみの恋〜
夏休みの終盤には、
総体陸上競技が執り行われる。


陸上部が、たいして強くなかった我が校は、人数不足のため、
毎年、校内中から、おのおのの種目にあった有力な人材を選抜して、大会に挑んでいる。


特に、女子が少なく、
昨年も選ばれていた私は、
何が何だか解らぬまま、
100メートル走の補欠で終わってしまったが、

今年も、夏休み前に声が掛かり、
“今年は頑張ろう”と
意気込んで練習に挑んでいたところだった。


もちろん、陸上部と混ざっての練習だ。


実は去年、恭一も選ばれていたのにもかかわらず、
あの頃の恭一は、
一度も練習に顔を出すことがなかったため、
当然、選手に残ることがなかったが、

今年は本家本元として、
おおいに期待をされる立場として挑むこととなる。


遅い入部で、地区予選では、力の本領を発揮できなかった分も気負っているようだ。


それがプレッシャーとなっているのか…
私には、いつもと違って見えた。


せっかく同じスペースで練習していても、
恭一だけ別の空気を漂わせ、
今まで見たことの無い、恭一の表情に困惑し、
話し掛けることすら出来ない私は、
一緒に帰れることだけを、楽しみに待っていた。


「先に帰ってて良いのに」

「だって、せっかく期間限定だからさ!」

「なんだそれ。」

「…お気楽でごめんね。陸上部にとっては本業だもん、やっぱりプライドがあるよね。」

「…?なに?」
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