切恋‐セツコイ‐
ギクッ。
「…聞いてねーよ。もうそれにあわないだろーし、そんな期待すんなや。」
「はぁ!?聞いてねーの!?ほんっとにお前は何してんだよー!!」
頭を抱え出す輝。
丁度、着替え終わり俺はスポーツバックを肩にかける。
「じゃ、俺もう行くから。お疲れさん。」
「あっ、おい翔太!!」
輝を無視して部室のドアをくぐり、バタンとドアを閉めた。
校門に向かいながら考える。
言えねーよな…
名前とアドレス本当は聞いたなんて。
俺だって本当は聞く気なんて無かった。
ズボンのポケットに入っていた黒色の携帯を取り出して、アドレス帳を開く。
‘ 南沢 沙智 ’
俺はただ、そう映し出された携帯の画面を見つめ続けていた。