finder
「……この空気嫌い」
絵美ちゃんが珍しく弱気なことを言った。
「慰めるとかできないから。…まじ、泣かれたら困る」
絵美ちゃんはぷいっと向こうを向いてしまった。
「…絵美ちゃん、照れてる?」
そんなことを言ったら、絵美ちゃんはトイレ、といって1人でトイレに行ってしまった。
照れてた。
あの絵美ちゃんが照れてた。
かわいいとこあるんだな。
ボールを拾った。
指に吸い付く感覚が気持ちいい。
指を離れる瞬間も、ジャンプでフワッと浮いた体も、ざらざらしたボールの表面も全部気持ちがいい。
忘れよう。
無理して嫌なこと覚えておく必要なんかない。
たった一本のシュートを放っただけで出てきた汗を拭った。
その時だった。
「間宮っ」
真後ろで肩で息をする音が聞こえた。
振り返れない。
…―広瀬くんが、いる。
あの時と同じだ。
広瀬くんはゆっくりと近づいてきている。
いやだ。
こないで―…