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最初にボールを取って、じゃあ俺からと言って栗本くんは勝手に自己紹介を始めた。
「栗本和真。えー…陸上部。和真でいいから。よろしくっ」
そこから広瀬くんにパス。
「おわっ、えっと、広瀬奈都、俺も奈都で、俺も陸上部です」
ボールは奈都の手を離れてわたしのところに来た。
「間宮明日音、バスケ部。クラスのポジションはいじめられっ子」
なんだか改めて自己紹介するのは照れくさい。
自分で自分の名前を言うのも変な気持ちになる。
早く次に回してしまいたくなって、絵美ちゃんに向かってボールを手放した。
絵美ちゃん、何て言うかな。
だけど
ボールは
絵美ちゃんの手から滑り落ちた。
ボールが小さくバウンドして、やがて絵美ちゃんの足元に止まった。
「帰る」
絵美ちゃんはそれだけ言って帰ってしまった。
でも、
うつむいて言った絵美ちゃんの声は、
所在をなくして握りしめられた拳は、
気のせいじゃない、
小刻みに震えていた。