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奈都くんに待ち伏せされていた。


わたしはみんなが下校したのを見計らって、教室をでた。

部活に行く気にはなれなかった。

奈都くんは靴箱でわたしが来るのを待っていた。


「……部活は?」


「サボり」


爽やかな笑顔で切り返される。

少し間があって、奈都くんは切り出した。


「間宮、松藤のこと、知りたいか?」


何言ってるんだろう。

絵美ちゃんのこと……知りたくないわけがない。


「……知りたい」


奈都くんはまたニコッと笑って、じっちゃんのとこ行こう、と言った。


「和真が知ってることは、聞いたから。それ、教えるから」




和真くんは……きっと、絵美ちゃんの悲しみ顔も寂しい顔も泣いてる顔も知ってるんだ。


和真くんが絵美ちゃんを大切にしてることは一緒にいるとホントによく伝わってくる。

なんで、
なんでもっと早くこんな大事な当たり前のことに気づかなかったんだろ。

わたし、こんなだから深秋達に嫌われたのかも


また泣きそうになって、ぐっとこらえたら奈都くんに手を引かれた。


「泣きながら歩いたら、転ぶぞ」


「うっさいっ」


涙声だったのに笑えた。

奈都くんに掴まれた手首があったかい。

手首じゃなくて……
手、繋いでくれたらいいのに。

贅沢だ。

奈都くんは学校の人気者だから、わたしなんかが一緒にいるだけで奇跡なのに。

なのに―…胸がシクリと痛んだ。

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