finder
おじいさんは出かけているのか、奈都くんが呼んでも返事はなかった。
「奈都くんってもしかしておじさんの孫?」
勝手におじいさんの机をあさっている奈都くんに聞いてみた。
「そうだよ、じっちゃんは俺の母さんの父さん」
奈都くんは鍵束を見つけだし、言った。
「ついてきて、奥の部屋にいくから」
奈都くんは本棚の間を通って奥にあった黒い扉を開けた。
「入っていいよ」
奈都くんは電気のスイッチを探している。
部屋は真っ暗で不気味な感じがした。
「お、あった」
電気がつくと一瞬目が眩んだ。
部屋の真ん中には
―…ピアノがあった。
あとは椅子が一つ。
「ピアノだ…奈都くんが弾くの?」
奈都くんは恥ずかしそうに笑って言った。
「これ教えたの、間宮だけだからな」
…ずるい。
すごく、ずるい。
そんな変なふうに期待させないでほしい。
まだ許したわけじゃないのに、こんな気持ちになるわけないのに。
こんなのは―…こんな気持ちは認めたくない。
奈都くんは椅子に座るように勧めて、ピアノを開けた。
「間宮、音楽得意?」
わたしが首を横にふると、奈都くんは鍵盤に手をかけた。
「ちょっと聞いてみ」