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「大丈夫?絵美ちゃん」
絵美ちゃんも驚いたみたいで、しばらくは返事がなかった。
わたしは絵美ちゃんを支えたまま、床の上の松葉杖に手を伸ばした。
さすがに届かない。
突然、
「ほら」
と、松葉杖が持ち上がって、わたしの目の前に差し出された。
「奈都くん、ありがとう」
奈都くんはそのまま何も言わずに自分の友達のところに帰っていった。
わたしは絵美ちゃんに松葉杖を渡した。
「ありがと」
絵美ちゃんはそう言って小さく笑った。
わたしは絵美ちゃんから離れた。
絵美ちゃんはまた狭い机の間を進んでいった。
わたしは深秋達を振り返らない。
「明日音、あんた、そういうこと?」
どういうことだよ。
「また裏切るんだ?」
またってなに?
わたし、あんた達を裏切ったことないじゃん。
「あーあ、せっかく元通りだったのにねー、平和乱されたわ」
あんた達がそういうことしなければ、みんな平和なのに。
「今からまたハブだね」
最後に言った深秋の声が、わたしの心に突き刺さった。
けど、なんか、どうでもよくなった。
寂しくないと言えば嘘だけど、このまま泣いて負けるのも悔しい。
前回は下がりっぱなしだった顔を、今は、絵美ちゃんのおかげでちゃんと上げていられる。
こんな理不尽なことに負けてたまるか!!
キッと深秋達の背中を睨み付けた。