ヒロシマ1945 綾美とまな美
第一章
1945年8月6日 あの日も暑かったそうです。一瞬にして焦熱地獄となったあの日。


私は小さい頃、祖父から何度も何度も聞かされました。


東京で女優を目指し頑張っている、小林まな美(24歳)は、終戦記念日の今日、ふとそんな事を考えていた。

まな美は仕事で広島に来ており、空き時間に原爆資料館に来ていた。

まな美は数々の資料を見たあと、手洗いで化粧を直していた。


「原爆が広島に投下されなかったら、日本は今とは違っていたんだろうな」


◎広島市への原子爆弾投下は、第二次世界大戦の1945年(昭和20年)8月6日午前8時15分に、アメリカ軍が日本の広島市に対して投下した。
これは実戦で使われた世界最初の核兵器である。この一発の兵器により当時の広島市の人口35万人(推定)のうち約14万人が死亡したとされる。


「もうすぐ正午だわ、黙祷しなきゃ」

まな美は目を閉じ、黙祷を始めた。

その後、手洗いのドアを開けた時に見知らぬ風景が目に入った。

「何?ここは何処?」

辺りは兵隊が銃を肩からぶら下げて、ある方角に向かい急いでいる。

周りの建物は明らかに昔の建築物ばかり、道行く人達の服装も、まな美がテレビで見た事のある、いわゆる戦時中の服装だった。

「あれぇ、映画のロケ現場かな?」

まな美は何だか不思議な感じがしたが、とにかくロケ現場らしき街を歩き始めた。


100メートル程歩いた時に、警官に声をかけられた。

「あんたは、何でそんな格好をしている?鬼畜米英の手先だな」

「何でって?
いったい何のロケをやってるんですか?」

「ロケ・・何だそれ?なんか怪しいなお前、ちょっと来い」

警官はまな美を派出所に連行しようとした。

「ちょっと待って下さい、私が何をしたって言うんですか?」

まな美は無理矢理、派出所に連行されてしまった。

「名前と住所は?」

「小林まな美、東京から来ました」

「何で広島に来た」

「撮影の仕事があったので、昨日の夜に新幹線で来ました」

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