ヒロシマ1945 綾美とまな美
その話に綾美がそれほど信じていないという事が、まな美にもわかった。

その時にけたたましい音で空襲警報が鳴り始めた。


「綾美、警報だッ!防空壕にいくぞ」

「健治さん、先に行ってて!私はまな美さんを連れて後から行くから」

「わかった!お腹の赤ちゃんに気をつけてな」

その時まな美は先程資料館で見た事を思いだしていた。

「ちょっと待って!今夜の広島に空襲はないわ、あれは偵察機だから安心して」

まな美の突拍子もない言葉に健治が怒った。

「何であんたにそんな事がわかるんだ、昨日は岡山で空襲があったらしい、今晩あたりは広島だろうと誰もが言っているんだぜ」

「広島に今晩は空襲はないわ!なぜならば明日の朝、広島に大きな原子爆弾を落とすから!
その原爆で広島の人が14万人近く死んでしまうの。」

「・・・」

「綾美さん!健治さん!いますぐ広島を離れて、お願い!」

「あんたはいったい何を言ってるんだ、頭がおかしいのか?」

「お願い信じて下さい。その証拠にあと2時間後にもう一度空襲警報がなります。もちろん空襲などはありません」

綾美と健治は沈黙している。

そしてまな美は、自分が知っている事を全て話し始めた。もちろん自分があなた達の孫だという事以外は。


「健治さん、もう一度空襲警報がなったら、まな美さんの言う事を信じてみましょうよ」

「しかしお前、明日の朝は産院にいかなかったらならないだろう」

「でも、まな美さんに何の得があって、こんな事を言うというの?」

三人は次の空襲警報を待ってみる事にした。


その頃、米軍第509混成部隊の観測用B-29が広島上空を飛び、「翌日の広島の天候は良好」とテニアン島に報告していた。

同時刻、テニアン島ではポール・ティベッツ陸軍大佐がエノラ・ゲイ(広島に原爆を投下したB-29爆撃機)の搭乗員に出撃命令を伝えた。

「今夜の我々の作戦は歴史的なものだ」


そしてまな美の言った通りに空襲警報がなった。


「本当になった、わかったよ、まな美さんの言う事を信じてみるよ、それで何処に避難すればいいの?」

綾美はまな美に聞いた。

どうしよう、そこまで資料を見なかったわ・・・

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