ヒロシマ1945 綾美とまな美

「とにかく広島市を離れましょう」

綾美と健治は叔父さんのいる呉市に向かう事を提案した、まな美も呉市迄いけば多分大丈夫だろうと身仕度を手伝う事にした。

リヤカーに荷物を積んで、三人が出発したのが8月6日深夜の1時45分。

偶然にも同時刻、核爆弾リトルボーイを搭載したエノラ・ゲイは1時45分にテアニン島A滑走路の端から離陸した。

テニアン島から目標の広島市までは約7時間の飛行で到達できる。


健治はリヤカーに荷物と身重の綾美を乗せて、呉に向け歩き始めた。

「まな美さん!その原爆っていうのは、明日の何時に墜ちるの?場所は?」

「明日の朝の8時15分よ!場所は相生橋よりやや東南の島病院付近」

「島病院って言ったら、叔母さんが入院してるよ、大丈夫かな?堕ちたあとはどうなるの?」

「その付近一帯は一瞬にして焼失してしまうの、生存者はほとんどいないわ」

「健治さん、リヤカーを止めて!私、行かない」


綾美は何を思ったか急にリヤカーを止めた。


「叔母さんが死んじゃうわ、助け出さないと」

「綾美さん、待って!助け出すって言ったって、どうやって?
こんな夜中にお医者さんにそんな事言っても信用してくれないよ!それに今引き返したら、呉にはいけなくなってしまう」

「そうだよ綾美、まな美さんを信用してみるって言ったのは綾美だろう、最後迄信じてみよう」

その時まな美の身体に異変が起こった。

「あっ、頭が痛い!」

まな美はいきなり頭に強烈な痛みを感じた。

「あっ!まな美さんの身体が透けている」

「あ・・・」

1分程で痛みも治まり、身体の透けも消えていた。

「やっぱりそうなんだわ、綾美さんが呉には行かないと言ったからだ」

「まな美さん、どういう事?」

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