ヒロシマ1945 綾美とまな美
第二章

休み休み歩いて、朝の7時には呉市郊外の農村地帯にたどり着いていた。


「この辺り迄きたら、安心だわ。少し休みましょうか」

「しかし、不思議なくらいに静かだな、本当に爆弾が墜ちるのか」

「もうすぐ広島の上空を偵察機が飛ぶわ」

「休んでいる場合じゃないな、綾美のお腹が心配だ、病院を探さなくちゃ」

同じ頃、米軍の兵器担当兼作戦指揮官ウィリアム・S・パーソンズ海軍大佐
兵器担当補佐モーリス・ジェプソン陸軍中尉
爆撃手トーマス・フィアビー陸軍少佐らが爆弾倉に入り、リトルボーイの起爆装置から緑色の安全プラグを抜き、赤色の点火プラグを装填した。


「兵器のアクティブ化完了」

「了解」

「諸君、我々の運んでいる兵器は世界最初の原子爆弾だ」

積荷の正体を初めて搭乗員全員に明かした。


7時過ぎ、エノラ・ゲイ号に先行して出発していた気象観測機B-29の1機が広島上空に到達した。


クロード・イーザリー少佐のストレートフラッシュ号である。

7時15分ごろ、ストレートフラッシュ号はテニアン島の第313航空団に気象報告を送信した。

「第1目標の視界よし、第1目標を爆撃せよ」


この気象報告を四国沖上空のエノラ・ゲイ号が傍受し、投下目標が広島に決定された。


「ところでまな美さん、私のお腹の中の赤ちゃんは女の子何だよね?名前は何て言うの?」

「お母さんの名前は『愛』という字、一文字で『まな』といいます」

「愛(まな)か、いいね、健治さん」

「ああ!」

まな美は話そうか迷っていたが、綾美に聞いてみた。

「綾美さんは、身体の調子はどうなの?」

「いたって健康だよ、今まで、病気らしい病気にかかった事がないんだから」

まな美は思っていた。病気知らずの綾美さんが何故、赤ちゃんを産んだ後に死んだのかしら、やっぱり放射能や少なからず原爆の被害があったのかしら。

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