ヒロシマ1945 綾美とまな美
「綾美さん、健治さん!急いで大きな建物の影に隠れなきゃ!
原爆が堕ちた後に雨が降るの、その雨には放射能というものがあって、放射能をあびるととても危険なの、急ぎましょう」
まな美は時計を見た!
時刻は8時8分。
原爆の投下まであと7分だった。
「後7分しかない、急いで」
「おっあそこに納屋がある、納屋の影にかくれよう」
三人が納屋の影に隠れたのは、原爆投下3分前の事だった。
8時12分、エノラ・ゲイが攻撃始点に到達したことを、航法士カーク陸軍大尉は確認した。
投下目標を相生橋に合わせた。
相生橋は広島市の中央を流れる太田川が分岐する地点にかけられたT字型の橋である。
その特異な形状は、上空からでもその特徴がよく判別できるため、目標に選ばれたのだ。
8時15分17秒、原爆リトルボーイが自動投下された。
リトルボーイは爆弾倉を離れるや横向きにスピンし、ふらふらと落下した。間もなく尾部の安定翼が空気を掴み、放物線を描いて約43秒間落下した後、相生橋よりやや東南の島病院付近高度約600メートルの上空で核分裂爆発を起こした
「ドーン!!!」
とうとう人類初の原子爆弾が爆発した。
「わあー、凄い風だ!」
「綾美さんに風があたらないようにして健治さん、光を見ちゃダメだよ綾美さん」
「わかった」
健治は綾美に毛布をかけて、自分も綾美に覆いかぶさっている。
まな美は二人を守るのに必死で、納屋の建物から出ていた釘に足を引っかけて負傷していた。
しばらくして、風が収まった時に健治は広島の街の方を見てみた。
「何だ、あの雲は?」
「キノコ雲よ」
まな美が言った。
◎キノコ雲
核爆発や火山の噴火、通常爆薬や事故による大爆発などに伴う上昇気流によって生じる雲の事。核爆発によるものを原子雲という。
「もうすぐ雨が降ってくるわ、その雨は放射能を含んでいて危ないの、絶対に雨に濡れてはいけない。
早く病院を探しましょう」
「よし行こう!たしか本町の方に産院があったはずだから」