アンダンティーノ ―恋する旋律 (短編)
「でも何かもっとできなかったの?

 えーと、ほら夢枕に立つとか、よく
 あるじゃない?」

「できませんでした。

 僕、霊感が弱いから」

 テツロウは眉根を寄せ、悔しそうに
つぶやいた。

 霊感の弱い幽霊――思わずふき出し
そうになり、ユマは急いで下を向く。

「そうしているうちに時間ばかりが
 どんどん過ぎてしまったんです」

「時間って……ねえ、どうしてそんな
 に時間を気にするの?」

「この世に強く思い残すことがあると、
 それをかたづけてからでないと旅立て
 ないんです。

 天国に行けないって言うのかな?

 それも期限があるらしくてね。

 一年目の命日までに何とかしないと、
 永遠にさまよう霊に――」

 一年目? 

 さっきテツロウは一年前に死んだと
言わなかっただろうか?

「ね、ねえ、命日っていつなの?」

「七月三日です」

 明日だった。
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