アンダンティーノ ―恋する旋律 (短編)
行方
 夕日に照らされたテツロウの家は
どこにでもありそうな二階家だった。

 新しくはないが、こげ茶色の屋根も
アイボリーの壁も色落ちしていないし、
どの窓ガラスもきれいにみがかれて
いる。

 木製のフェンスごしに、庭に色とり
どりの花が咲いているのが見えた。

(きっと彼もご両親に大事に育てられ
たんだろうな)

 ユマの思いが伝わったかのように、
テツロウが口を開いた。

「両親は今ウィーンに行っています。

 命日が近いからって。

 僕が日本に戻ってきていることが
 わからないんですよ」

 テツロウは力なく笑った。

 すぐ近くにいるのに、すれ違って
しまう。

 見てもらえない。

 話しかけてももらえない。

 もちろん触れることもできない。
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