アンダンティーノ ―恋する旋律 (短編)
思い
「ユマちゃんにも……好きな人がいる
 んだね?」

 突然、テツロウが囁いた。

 ショウコの親友という人を訪ねて、
またしても空振りに終わった後のこと
だった。

 ユマとテツロウは駅のホームの一番
端に置かれたベンチに座っていた。

 そこなら人気がなく、ユマが姿の
見えないテツロウとしゃべっていても
誰にもあやしまれないからだった。

「えっ? えっ?」

 ふいうちだったので、ごまかすこと
はできなかった。

 ユマの顔がみるみる赤くなる。

 それを見たテツロウが楽しそうに
笑い声を上げた。

「ああ、やっぱりね」

「ちょ、ちょっとひどいよ。
 こんな時に――」

「すぐわかったよ。

 この子も一生懸命恋している。

 だから助けてくれるんだなって。

 で、どんな人?

 かっこいいの?」
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