アンダンティーノ ―恋する旋律 (短編)
 かろやかな、幸福を予感させる
メロディー。

 そう、『愛の挨拶』って、こんな曲
だったっけ。

(えっ?)

 ユマは驚いて、自分の目をこすった。

 テツロウは一生懸命弾き続けている。

 その手元にはヴァイオリンも弓もない。

 けれども確かにユマの耳には、美しい
音色が響いてくるのだった。

(ああ……)

 大好きだった。

 本当に大好きだった。

 いつもあなたの幸福だけを願っていた。

 これからもそれは変わらない。

 ずっとあなたを見守っていく

 ――由真は気づいた。

 流れてくるのは、テツロウのショウコに
対する一途な思いだ。

 それが旋律になってユマに届いている。
 
< 24 / 34 >

この作品をシェア

pagetop